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鳥の目 虫の目 魚の目
林 雄一郎 著
A5版、340頁、\2,000
ISBN4-906472-69-9

外国の実情に詳しい、マスコミの目ともいえる著者が、今までのコラムを一冊の本にした。湾岸戦争などの国際政治、日本という国、彷徨える現代人の本質、四季折々の人生など深く掘り下げて、しかしさりげなく描いている。

意外とさわやかな内容である。
今読んでも新鮮な感性を読みとってもらいたい。

著者紹介:
林雄一郎(はやし ゆういちろう)
1934年 東京生まれ。56年3月、東京外国語大学インド語科卒。
同四月共同通信社入社、外信部勤務。サイゴン支局、ワシントン支局勤務などを経て81年6月外信部長、
87年8月国際局長、90年7月論説委員室長、92年6月編集局長、96年6月編集顧問。
九八年六月退社。今もコラムを書いているそうである。

著者まえがき:
 信濃毎日新聞の夕刊コラム「今日の視角」の欄に1996年9月から2003年3月までの6年半、毎水曜日掲載していた拙文を大ざっぱに項目分けしてまとめたものである。日頃、ジャーナリストには、遠くを見渡す鳥の目と、地面を這いながら目の前を見る虫の目とが必要だと思ってきた。そのあるべき目線を僭越ながら表題にした。魚の目は、魚河岸の床に並んでいる魚の目のことで、とろんとして動かない様を自分の酔眼に見立てた。
 6年半の半ば辺りで、妻が世を去った。生前、妻は病床にあって、このコラムを心待ちにし、出来た原稿を最初に読み批評することを楽しみにしていた。妻が分からないとか、面白くないと言ったときは必ず書き直した。いろいろな思い出がある。死なれたときは本にまとめ手元に残したいと思った。将来、成人した孫たちが手に取ってくれたらという気もある。そんな気持ちで柄にもなく本にした。
 本にすることを快く許してくださった猪股編集局長以下信濃毎日新聞社の皆様、コラム原稿をチェックし助言してくれた信毎東京支社の歴代報道部の方々には心から感謝しています。

目次:
1章 ブッシュのアメリカ
2章 グローバル世界の風景
3章 国際政治の論理
4章 おカネの世界
5章 情報とメディアと社会
6章 日本という国の風景
7章 まあいいか先生の周辺
8章 酒と肴と四季


書評(信濃毎日新聞 2003年10月5日より)

鳥の目 虫の目 魚の目
反骨精神が投影されたコラム集

 文は人なりというが、コラムからは自ずと著者の思想や人柄がにじみ出るものだ。それがコラムを読む楽しみでもある。本書は、本紙の夕刊に6年半にわたって連載された320編を越えるコラムをまとめたものである。

 国際政治、国際金融通のジャーナリストである著者は、小学6年生で敗戦を迎える。その原体験が、著者の心に「集団に対する不信、群れることへの嫌悪」を深く刻み込んだという。「私たちをコケにした国の体制と指導層を今も許せない」という反骨精神は、時代の観察眼に投影されて、小気味よい批判的文体を生み出している。

 原理主義への態度は一貫している。イスラム原理主義は言うに及ばず、ブッシュのアメリカも「タリバンに劣らぬ原理主義」と明快に言い放つ。グローバリゼーションの推進者に対しても、他国の文化的差違を無視した市場主義一辺倒の原理主義者だと手厳しい。

 日本の世相にも鋭い刃が向けられる。若い世代の政治的無関心を自己中心主義と解する議論には組せず、かれらは「今の政治に失望」しているだけだと反論する。むしろ問題は、国の借金を積み残しても既得権益は放さない「浅ましい老人政治」の方にあるのではないかというのが著者の判断である。

 若者の発作的犯罪におろおろする前に、親も教師も「本気で」子どもとけんかをすべきだと提言する。厳しさと優しさは対をなすといい、親が子を叱(しか)らないのは親の方が自分の人生観に自信を失っているからだと断ずる。

 マスコミへの注文も厳しい。記者に対しては、時代の空気を煽(あお)るのではなく「冷静な目で空気に水を差す」努力をせよと叱咤(しった)する。また、報道の自由は、「報道人の勇気と良心」と結びつかなければ意味がないともいう。ズシリと重い指摘である。

 本書のタイトルは、高みから全体を俯瞰(ふかん)する鳥の目と、地面を這(は)い細部を見逃さない虫の目が共に必要との観点からつけられた。しかし、第三の目は、魚河岸に並ぶとろんとした魚の目で、著者の酔眼に見立てて選んだのだという。なるほど、最後に配された20数編のエッセーには、酒と肴(さかな)をこよなく愛する著者の面目が施されている。

(長島伸一・長野大学教授)
発売はライフリサーチプレス(株)

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