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光の旅
鈴木 由希子(東京都職員、東大文学部卒) 著
A5変形、126p \951

20年前の幼児の頃から書きはじめた詩集もすでに1000篇を数えるようになった。そのうち思いで深く、心に残った30篇を選んで、豊に薫る人間性と乙女心の成長と変遷を画いてみた。あなたの感性に訴える斬新な詩集。

 旅立ち

「僕、航海するんだ」
その少年は、ぽつりと言った。
「エンジンもあるし、なぎにあったときのための櫂もあるし、
なんでもある、すてきな船でさ」
少年は目を輝かせて言った。

「その船、見せてあげようか」
少年は、走る。海辺は静かだ。
立ち止まった少年は、ポケットから何かを出してふくらませた。
浮き袋だった。
それを海に浮かべると、少年はすわって言った。
「エンジンは足、櫂は腕、舵は頭なのさ」

人気のない静かな海を
少年の船は進んで行く。

後には、何も残らなかった。


 原点

少し疲れているけど、
いったいそれが何だろう。
明日、また太陽が昇れば
きっと私は笑うだろう。
暖かい日光や澄んだ空気が嬉しくて、私は立ち止まるだろう。

     深い深い深呼吸

空が真青に広がっていれば、それだけで十分ではなかろうか。
それ以上、何が必要だろう。

雪の平原のような心の中を
風が一吹き、通り抜けてゆく。
     明日も私は生きるだろう。


   心象風景

誰もいない森の中
深緑色の空気は厳かに静まり返り
音にならない生命の音が
一定の速度をもって流れ続ける

この冷たい、湿った場所には
太陽の光は届かない
けれども確実に存在している
深くて重い“何か”の可能性
それが私を捕らえて放さない

鳥の鋭い叫び声が引き裂いた

一斉に始まった、秩序をもったざわめき
それは私をかき乱す
畏怖と願望とにゆさぶられ
私もざわめきに溶け込んでしまう

クライマックスはすぐに消え去り
あとには虚ろな空間が

またも“何か”をつかみ損ねた

深海のように、重く、深く、圧迫感をもって
静まり返った森

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